部屋の数と幸せの数は比例しない

N MAEDA ATELIER Project
CASE06
N MAEDA ATELIERロゴ
N MAEDA ATELIERロゴ02
枠
  • 現場01
  • 現場02
  • 現場03
決して広くはないのに使わない部屋が2つもありました。
車椅子の向きを変えるごとに小さいストレスを感じながら
いったい誰のための家なんだろうと。。
×
僕は、大学時代に学んだ建築についての考え方を
一貫して変えることなく今に来ています。
このプロジェクトでは、それを最も純粋な方法で
形にしたいと思いました。
普通の時間の中で、小さな事件があちこちで起こり
それがどのくらい楽しいか、ほんとうは世界がどれくらい美しいかを教えてくれる家
DEVICE#9 デバイス#9

ワンルームでかまわない。

無駄なものは省いて、常識にとらわれない家がいい。

敷地全部を使ってほしい。

最初にそんなことを伝えたように思います。

それが、こんなとんでもない家ができる始まりになろうとは(笑)。

だって、家ができて初めの2,3ヶ月、宅配のお兄さんたちから
『お宅が見つからないんですけど・・』
という電話が何度かかってきたことか・・

ー クライアント

僕は、大学時代に学んだ建築についての考え方を 一貫して変えることなく今に来ています。

それを難しい言葉で言えば「現象学的空間」となりますが、簡単に言えば「建築の要とは、外観/内観デザインに凝ることでなく、その空間のなかで住まい手がどうその“空気の雰囲気”を感じ取るか」というシンプルなことに過ぎません。

これを、「空気の設計」と言うこともできると僕は思っています。

このプロジェクト:Device#9では、こうした考えを最も純粋な方法で形にしたいと思いました。

ー 前田

  • DEVICE#9の初期スケッチ01
  • DEVICE#9の初期スケッチ02
  • DEVICE#9の初期スケッチ03
  • DEVICE#9の初期スケッチ04
  • DEVICE#9の初期スケッチ05

住宅雑誌を見てて気になる家がいくつかありました。

なぜか、それらは全部、前田アトリエが設計した家でした。

どれも好きだったけど、中でも「FUNES」と「ALICE」が心に刻まれました。

自分が依頼すればどんな家ができるんだろう・・

と、まだ遠い先のことを想像しながら、でも自分の時だけ、とんでもないような変なのが出てくるんじゃないかとつい、ありもしない「不安」に怯えることすら楽しんでました(笑)。

ー クライアント

前田アトリエ設計の家「FUNES」と「ALICE」

京都の龍安寺の石庭は、いたって簡素で「カラッポ」な作りですが、様々なものを、鏡のように「映し出す」ことができます。

晴の日、曇りの日、夕焼けや星空、雨や雪、夏と冬、更には、そこにいる自分の「心」も映し出してくれます。

そして、その時々で驚く程、その姿を変えてくれる庭なのです。

「カラッポ」であるが故に・・・・。

ー 前田

GARDENという【装置】

この住宅は僕達の考える最も純粋な建築のひとつです。

まず敷地条件から許される限り最大の「カラッポの箱」(敷地境界線から50cm離したもの)を用意することから始まります。

これは「自分の家として、敷地全体を見渡せる広さ(=開放感)を感じることができる」という理由によります。

しかしこのままだと建坪率は約【90%】となってしまい、敷地の法定建坪率【50%】をオーバーしてしまいます。

よって、その【40%】余計な部分を【建物でない場所】にすれば、法規には適合することになります。

  • DEVICE#9の模型02写真はすべて模型です
  • DEVICE#9の模型03写真はすべて模型です
  • DEVICE#9の模型04写真はすべて模型です

このプロジェクトでは、この【40%】分をGARDENにしてみたのが特徴です。

GARDENは建物ではありませんから、建坪率には入りません。

どうせ【40%】を削らなければならないのであれば、それを逆手に取ってGARDENという魅力あるスペースとして生かしてしまえばいい訳です。

一丁の豆腐から、包丁で「4箇所のブロック」(GARDEN)をくり抜いたみたいに。

DEVICE#9の模型01

装置1:「大きなもの」を一つでなく「小さなもの」を沢山

装置1のイメージ_01

住まいの空間を豊かにするひとつの手法として、

「大きなもの」をひとつでなく「小さなもの」を沢山

というメソッドがあります。

ここではそれをGARDENに使ってみました。

「大きな中庭がドーンとひとつあるより、小さな中庭が所々に沢山散在している」というイメージです。

そうすると、室内に居ながらにして、前にも/後にも/左にも/右にもGARDENが顔を出してくれるようになります。

住宅の「内部」にいた筈なのに、あそこにもここにも 沢山の豊かな「外部」がチョロチョロと顔を出してくるのです。

このプロジェクトで、小ぶりなGARDENが色々な場所に散りばめられているは、そんな理由に依るのです。

  • DEVICE#9のプレゼン資料01
  • DEVICE#9のプレゼン資料02
  • DEVICE#9のプレゼン資料03
  • DEVICE#9のプレゼン資料04
  • DEVICE#9のプレゼン資料05
  • DEVICE#9のプレゼン資料06
  • DEVICE#9のプレゼン資料07
  • DEVICE#9のプレゼン資料08

装置2:GARDENのテント

上の手順で欠き込まれた4つのGARDENは、いずれも隣家に向かって開いていますから、このままだとストレートに隣の家の窓や屋外機・給湯器等を見なければならなくなってしまいます。

装置2のイメージ_01

私たちは、そんな“プライバシー”や“見たくない物”を遠ざける工夫として、4つのGARDENを半透明のテントで囲ってみました。

これによって、隣家との視線は遮りながらも明るさを適度に確保できるようになりました。

装置2のイメージ_02

装置3:ガラスの間仕切り

次は、GARDENの内部をどうしつらえるかが課題となります。

採用された案は、GARDENと室内の間仕切り壁をすべて透明ガラスにしてしまうことでした。

それは、4つのGARDENの中すべてが透明に一望できるからです。

室内とGARDENが視覚的にすべて連続して一体になることで、住まいが実際以上の広さ感覚を持ち始めます。

そしていまひとつ、間仕切り壁が透明ガラスになることで、室内4つのGARDENの境目が消滅してゆきます。

室内に居てもに居るみたいで、に居ても室内にいるような感覚、これこそが、この建築の空気に他では味わえないダイナミックな魅力を与えてくれることになります。

室内に居ても、雨や空や月がとても近く感じられるということです。

  • ガラスの間仕切り_01
  • ガラスの間仕切り_02
  • ガラスの間仕切り_03
  • ガラスの間仕切り_04
  • ガラスの間仕切り_05

CGを見て大混乱し、模型を見てひっくり返りました。

それくらい驚きました。

平屋?

外にすべて閉じる?

家の中にガラスの庭?

何もかもが、待ち続けた僕らのちっぽけな予想をはるかに凌駕するサプライズの連続でした。

いいのか/悪いのか、好きか/嫌いか、そんな原始的な判断すらできないくらい、いっとき、頭が停止してしまったようでした。

「もーいーくつ寝るとー」みたいな日を毎日毎日繰り返してようやくやってきたプレゼンの日。

前田アトリエと出会い、竣工するまでの長い時間の中でダントツで記憶に残っているのがこの日です。

ようやく興奮が冷めた頃、僕らはこのファーストプランを何としても実現したいと思いました。

それから1年半、前田アトリエとの家づくりを通して、僕ら夫婦は、さらけ出し、ぶっちゃけ、それまでの10年で気づかなかったお互いの本性をたくさん目にすることになりました(笑)。

ー クライアント

装置4:GARDEN床の素材(ステンレス板)

GARDEN床の素材は、鏡面仕上げ(鏡みたいに反射します)のステンレス板になっています。

これは、空や雲や月や夕焼けが、GARDENの「床面」に映り込むであろうことを期待しています。

人間というのは、上より下の方向を見る習性があります。

鏡面仕上げの床は、上(空)にある自然(空・雲・月・夕焼け)たちを、日常生活で頻繁に感じる下(床)にまでデリバリーしてくれる効果を持ちます。

斜めガラスと床の装置

設計図とGARDEN床の素材

  • 晴れた日晴れた日のGARDEN
  • 雨の日雨の日のGARDEN
  • 夜夜のGARDEN
  • 夕焼け夕焼けのGARDEN
  • 雪の日雪の日のGARDEN

また、GARDENに植えられた植物たちがユラユラしている風景を目にすると、外で柔らかい風が吹いていることも感じるかもしれません。

風を目で感じるということです。

夕焼け、雪(昼と夜)のGARDEN

装置4:GARDEN床の素材(ステンレス板)

雨の晩に車に乗っていることを想像してみてください。

フロントガラスをつたう雨粒には、街のネオンやヘッドライトが映り込み、幻想的な風景が演出されます。

装置4:GARDEN床の素材(ステンレス板)

Device#9の大きなガラス面が敢えて斜めにされているのはお洒落だからでもデザインした訳でもなく、その幻想的な空気の感触を生活の中に浸入させたかったからです。

装置4:GARDEN床の素材(ステンレス板)

前田アトリエとの家づくりを通して一番感じたことは、僕らがいかにつまらない『入れ知恵』に縛られた考えにもとづいて生活してきたか、ということでした。

住宅には住宅の建材や部材があると勝手に思い込み、家には玄関が必要だと決めつけ、家は「中」「外」ではないとあたり前のように考えています。

でも、「中」の中に「外」があってはいけないと、誰が言ったんでしょうか。

家の中に、「外」があってもぜんぜん問題ないし、そんなつまらない常識という箍(たが)が外れた時、僕らの目の前に、決して小さくない『感動』が生まれることを知ったのは、この家に住んだからです。

ー クライアント

装置4:GARDEN床の素材(ステンレス板)

脳がいつも小さなトラブルを起こす。それが心地いい

※音が流れますので、音量にご注意ください。

DEVICE#9ウォークスルー

装置4:GARDEN床の素材(ステンレス板)

中と外が幾重にも連なる空間を、目が串刺しにしてしまうようなレイアウトが、僕の中にいまだに居座る常識と衝突し、脳内に小さいトラブルを引き起こしますが、案外それが心地いいんです。

ー クライアント

一見シンプルに見えるこの箱の中には、これだけの装置(Device)が用意周到に準備されています。

「カラッポ」の箱の中にひとたび足を踏み入れると、そこは全く違った風景が広がっています。

一番先に書いた、

「建築の要とは、外観/内観デザインに凝ることでなくその空間のなかで住まい手がどうその“空気の雰囲気”を感じ取るか」

DEVICE#9ではこのことの意味が、できる限りシンプルに実現されているのだと思います。

ー 前田

何階建て?

毎週、毎週、週末になると夫婦で現場に通いました。

最初の2ヶ月は、いつ来ても基礎工事。鉄筋の数が増えているだけ。

鉄筋工のお兄さんから「この家は3階建てですか?」って聞かれて面食らいました(笑)。

ー クライアント

  • 家を作る職人01
  • 家を作る職人02
  • 家を作る職人03
  • 家を作る職人04
  • 家を作る職人05
  • 家を作る職人06
  • 家を作る職人07
現場の風景
この家では小さな事件があちこちで起こります。
それがどんなに楽しいか、月がどんなに明るいか、流れる雨がどんな模様を描くか、
ほんとうは世界がどれくらい美しいか、
教えてくれたのがDEVICE#9です。
  • 家の写真01
  • 家の写真02
  • 家の写真03
  • 家の写真04
  • 家の写真05
  • 家の写真06
  • 家の写真07
  • 家の写真10
  • 家の写真08
  • 家の写真09
家の写真13
家の写真14
家の写真15
家の写真17
家の写真16
家と家族

竣工した家を味わいながら暮らす長い長い時間と、竣工までのエキサイティングな色褪せない時間が、ともに僕らの中にあります。

それは、言葉に置き換えることが悩ましいくらいに幸せなことなんです。

家の写真18

家の写真19

他の施主の方々は、たぶん僕とは異なる言葉で、彼らの大切な時間について語っていると思います。

それは前田アトリエとともに家を建てた人にとっての共通言語として彼らともこの感動を共有しているんじゃないかと思うんです。

12年が経過した今も思います。

暗くした家の真ん中でぼーっと酒を飲みながら、DEVICE#9は時間をかけて、一層、DEVICE#9らしくなっていくんだろうと。

ただ、家ができるまでの、あのエキサイティングな時間をもう1度過ごしてみたいと思うのも事実なわけで(笑)。

前田アトリエとの家づくりは、『最高の大人の遊び』ですから。

ー クライアント

渡辺篤史の建もの探訪

※音が流れますので、音量にご注意ください。

2003年5月31日放送(第727回)

千葉県千葉市・谷口邸−完全バリアフリー
白く輝く平屋−

建築家の一言

今回の住宅では、まず敷地条件から許される限りの最大の「カラッポ」の箱を用意します。

ですから、外観も殆ど無愛想な倉庫のようなイメージです。

そこにデザインらしいデザインはありませんね。

ただ、そのカラッポ」の箱の中にひとたび足を踏み入れると、そこは全くの違った風景が広がっています。

それを保証してくれているのが、これまた「カラッポ」の4つの庭なのです。

上から見た家の写真

ここでは、ただひとつの間仕切り壁もなく、ただガラーンとした「空気」だけがあります。

ただ、その「空気」が目には見えずとも、竜安寺の庭のように変化に富んだ色や臭い、音、感触を住まい手に感じさせてくれます。

家の写真20

建築は「物」をデザインするのではなく、「空気」の質をコントロールすることなのです。

渡辺篤史さんの感想

谷口さんのお宅は敷地58坪に建つ平屋の建物です。

この建物は既成概念にとらわれず、オリジナリティーに溢れています。

基本的にワンルームとなっており、ご夫婦にとって大変生活しやすい設計となっています。

私もしばらくの間ですが、とても居心地良く過ごさせて頂きました。

私は全体を見て、このモダンデザインは紛れも無く、建築家・前田紀貞さんの作品だと実感致しました。

渡辺篤史さんと家族の写真

アワード

第24回 
INAXデザインコンテスト金賞

第24回INAXデザインコンテストのサイト

デダロミノッセ国際建築賞
特別賞

デダロミノッセ国際建築賞のサイト

2005日本建築学会
作品選集

デダロミノッセ国際建築賞のサイト

INAXプロモーションビデオ

※音が流れますので、音量にご注意ください。

INAX(現LIXIL)「SUITEROOM」のコンセプトイメージにDEVICE#9が採用されました。

建築データ

DEVICE#9の建築データの写真

DEVICE#9

千葉県千葉市
一戸建て専用住宅
鉄骨造
192.80㎡(58.32 坪)
延床面積96.26㎡(29.12坪)
2002年12月
家族構成夫婦
クリエイター
施主の声へ ギャラリーへ

メディア掲載

hinge #108

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没汁家 2007/12

没汁家
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la Repubblica delle Donne 2004/10

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SPACE 2003/5

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CAODURO

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CASAS

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INTERIOR ARCHITECTURE NOW

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MODERN LIVING 2005/5

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MODERN LIVING 2004/3

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MODERN LIVING 2003/9

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別冊モダンリビング快楽住宅 2004/4

別冊モダンリビング
快楽住宅

2004/4

新しい住まいの設計 2003/6

新しい住まいの設計
2003/6

別冊 住まい100選 2004/9

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2004/9

BRUTUS 2006/2

BRUTUS
2006/2

Memo 2003/4

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2003/4

Esquire 2003/5

Esquire
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CONFORT 2003/7

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2003/7

HaWaYu 2003/12-2004/1

HaWaYu
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渡辺篤史のこんな家を創りたい 2004/11

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2004/11

厳選建築家名鑑 2003/11

厳選建築家名鑑
2003/11

Arigatt 2003/10

Arigatt
2003/10

新建築・住宅特集 2003/8

新建築・住宅特集
2003/8

空間を設計する

DEVICE#9に興味を感じられたあなたへ

家を設計するとは「形をデザインする」のではなく「空気を計画」することだと思います。

それは、魚が濁った水では生きられないように、人も濁った空気ではうまく生きられないのと同じことだと考えるからです。

もしも、あなたが、こうした家の建て方にご興味を持たれたならぜひご連絡ください。

そしてアトリエに遊びに来てください。

歓迎します。

前田紀貞

電話番号 03-6339-5435

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