建築家と建てる家 建築家との家づくり > 空間を設計する > CASE01
また、奇抜なデザインを押しつけられそうな先入観もありました。
だから最初は住宅メーカーを検討していました。
しかしどれをみても ピンとくるものがない。
そんな時にテレビで前田さんが手がけた家が放映されていたのを見たんです。
こんな方法があったのかと目からウロコでした。
ー クライアント
前面に大草原と筑波山を望む高台の敷地、この場所に最初に立った時、まず最初に自然と出てきた想いとは、「毎日の生活がピクニックみたいだったら……」というものでした。
森の中のピクニック建築は、光に満ちている場所もあれば陰になる所もあります。水があったり、山が見えたり、空が切り取られたり、広い平原が顔を出したり……、そんな宝物みたいなワクワクする場所が住宅の所々に待ち受けています。
毎日の取るにならぬ些細な生活が、いつもそんなドキドキする空気に満たされていて欲しい、そう感じました。
ー 前田
スケッチ、オブジェ、たくさんの模型を通して
大量の情報が整理、統合され
形になりはじめる。
最初に閃いた「ピクニックみたいな住宅」への想いは、クライアントの要望である「敷地の中で人生の記憶に残るような生活を……」と正に合致していると思い、僕達はその方向で設計を進めてゆけるであろうことを確信しました。
ただそれを具体的に実現するためにどうするかが問題でした。
沢山の建築模型を試作しながらそのパターンごとの住宅の風景を辛抱強く検証し、色々な質感の場所が点在する「森の中のピクニック建築を、言葉だけでなく現実の空気感として実現される方法を模索しました。
そこである日思いついたのが、「敷地をシマウマ模様に分割する」という【ルール】でした。
これは前途の写真のように、「敷地の端から端に“3枚の屋根”を架け渡す」という設計方法です。
このシンプルな建築【ルール】を適用することで、屋根のある部分は「内部」、無い部分は「外部」となります。
結果、敷地全体を見渡せば、「外〜内〜外〜内〜外〜内〜外」という、なんと7層の縞模様(情景)が出現してきたのです。
これだけでもこの住宅の敷地に複数の豊かな場所が産み出されるであろう予感を感じました。
加えて、「屋根=内部」という設定だけでなく、「屋根があっても外部」(壁の無い半外部)という場所も追加してみることで、建築の各々の場所ごとのグラデーションは益々引き立つようになりました。
ー 前田
さていまひとつの特徴として、普通の設計法であれば、敷地の中に「住宅」が建ち、“その他部分”が「庭」という単純な配置(住宅か/庭か)になります。
でもこのプロジェクトでは、「住宅」と「庭」の各々を細かく切り刻んで配置してゆくことで、沢山の「部屋」と「庭」が散らばるように細工されています。
これを【分散配置】といいます。
「部屋」や「庭」が大きな塊としてドーンと居座るのでなく、細かく分割されながら色々な場所に散りばめ配置されていくのです。
こうすると、「部屋と部屋の間に庭」が、「庭と庭の間に部屋」がサンドイッチされるようになり、住宅の各場所の質感は想像を超えて魅力あるものになります。
部屋の中に居ると、あっちには水盤が、こっちには山が、そっちにはテラスが……、といった感じです。
ー 前田
スライドショーが始まってからは目が釘つけ。
まさか130坪の敷地を全て使い切る案がでるとは思いませんでした。
本当に自分の家なのか。と信じられない気分でした。
止まったエスカレーターを歩くような目眩を感じました。
あの感動は今でも忘れられませんね。
前田さんが手がけた家はどれも全く違うんです。
外観をデザインするのではなく、目に見えない空気を設計する建築家ですから、他の家をいくら見ても自分の家がどんな風になるのか、さっぱりわからない。
それが不安でしたね。
ー クライアント
東京からつくば市まで通い、車で走り回って眺めの良いところや、筑波山を歩き回ったりして、結局、土地探しに一年半費やしました。
でも、この土地を見つけたのは本当に幸運でした。
実は、厳しい予算のため、一部、計画の見直しが必要になりました。
残念な思いをしていた時、前田アトリエが予算をクリアできる別の方法を考えだしてくれました。
一度諦めたことを逆転の発想で実現してくれたことが嬉しかったですね。
ー クライアント
PICNICに住んで、家族といる時間がより豊かになった気がします。
PICNICは外と中の境界が極度に曖昧な空間になっています。
中にいながら外にいるような錯覚もありますし、なにより四季がダイレクトに感じるようになりました。
ー クライアント
PICNICの配置計画には、更に更にもうひと工夫加えられています。
それは、仕切りとなる壁によって「見通せる場所」(透明ガラス)と「見通せない場所」(壁)の変化が付けられていることです。
味わいある空間というものは、ただ広く見渡せればよい訳ではありません。
敢えてあっち側を見せずに期待させるような気配、そういう空気の持つ働きこそが住宅というものをワクワクするようにしてくれます。
ー 前田
前田アトリエを一言で表現するならこうなります。
設計に一年、施工に一年、あわせて二年に渡る長い家づくりでしたが、前田アトリエとともに過ごした最高に楽しい二年間でした。
できないことをできないとは言わず、より良い解決策を前田アトリエは模索してくれました。
スタッフも本当に親身になってくれて頑張ってくれました。
筑波山が望める『筑波テラス』。
ここで日の出を眺めながら珈琲タイム、星空をながめながらの煙草の時間。
外が気持ちいい日はテラスにテントを張って寝ることもあります(笑)。
PICNICにいると、自然と早起きになります。
睡眠の質が良くなったからだと思います。
あと些細な事であっても、嬉しい時にはテラスでBBQして祝うことが増えましたね。
完成して5年経った今でも、あの2年間をつい最近のことのように思い出します。
あなたにも、このヒトしかいない!と心底から思える建築家がきっと見つかるはずです。
その想いを思いっきりぶつけてみてください。
きっと人生、180度変わりますよ!
ー クライアント
簡単な【ルール】(縞模様)を設定してみるだけで、複雑で彩り豊かな情感を創り出すことができるのですが、こうした設計アプローチこそ、僕達がいつも頭に描いている建築設計の手法なのです。
つまり、「空気の質をどう計画するか」ということです。
試しに、この建築模型の屋根を外して中を覗いてみましょう。
するとどうでしょう、様々な場所に部屋が散りばめられ、その隙間に樹木もあれば水盤もあります。
大草原に面するテラスもあれば空を見渡す場所、こじんまりとした小さい庭もあります。
大好きな車やオートバイを眺める場所だってあります。
ちょっと見ただけでも、この住宅の中でのウキウキするようなピクニックが目に浮かんできそうです。
こんな場所に光が落ち、風が吹き抜けてゆき、水盤の水のきらめきが各所に映り込みます。
この建築を写真でしかお伝えできないのが本当に残念なのですが、PICNICではその日の気分や季節によって、食事をする場所、コーヒーを飲む場所、本を読んだり子供たちと遊ぶ場所を変えたりすることだってできます。
どれだけ住み続けても決して飽きることのない「空気の質」のようなものが産み出されたものと自負しています。
ー 前田
※音が流れますので、音量にご注意ください。
家を設計するとは「形をデザインする」のではなく「空気を計画」することだと思います。
それは、魚が濁った水では生きられないように、人も濁った空気ではうまく生きられないのと同じことだと考えるからです。
もしも、あなたが、こうした家の建て方にご興味を持たれたならぜひご連絡ください。
そしてアトリエに遊びに来てください。
歓迎します。