建築家と建てる家 建築家との家づくり > 空間を設計する > CASE07
元々、沢山の要望がありましたし、複雑な空間が希望でした。
それに対してハウスメーカーに希望を伝えると、
工事代金がとても高く、ことごとく断られていました。
だから建築家に頼むしかないと思いました。
また、趣味のバイクをうまく室内に取り入れる、
という特殊なこともしていただきたかった。
ー クライアント
僕はこれまで沢山の住宅を設計してきましたが、そういう言葉を耳にしたのは初めてであり、驚きでもありました。
普通であれば、「リビングは最低何畳、寝室は最低何畳、、、」
となるところですが、そのあべこべの「小さな家」、つまり家族皆が肩を寄せ合って住む、という意味です。
「この人は本当に家ということの真の意味がわかっているのだなあ……」
と、その設計に際して改めて心したように記憶しています。
ー 前田
最初に敷地を見た時、その「地盤面」が道路面より高くなっており、あたかも敷地が宙に浮いているように感じられたことが印象的でした。
建築的に言えば、普通は土の中に埋まっている筈の「基礎」が、実は高さ的には道路に立った人の目線くらいにあるということになります。
であれば、その基礎が地中からズルズルと這い出してきて、それが1階の床になり、外構床になり、そしてスロープで2階の床に上がってゆき、最後には2階の壁から屋根に続くような一筆書きの板で建築を構成してみたらどうだろうか、と閃きました。
この方法がきっと「家族を想う気持ち」に繋がるだろう、という確信もありました。
ただ、この幾何学はあくまでイメージですから、実際にはその一筆書きの板を構造的に支える柱が必要となります。
これを6つの収納や個室(WC)に受け持たせました。
こうして、“一筆書き”のイメージが、そのまま「家族が寄り添う」ことにつながることになった訳です。
すなわち、色々な料理(家族の皆々)を別々の皿にではなく、渦巻き状の一筆書きの細長い皿の上に、寄り添って仲良く盛りつけることができました。
あとは、この一筆書きの一枚の皿の上に、諸室を配置すればよいだけでした。
諸室は下から、浴室、リビング、バイクスペース、キッチン、駐車場、1階ガーデン、スロープ庭、子供室、2階テラス、主寝室、屋根、という順番で配置されてゆきました。
※音が流れますので、音量にご注意ください。
地味な作業ですが、これも立派な仕事の1つです(笑)。
家族がとても大切だったので、皆の気配を常に感じたかったです。
また、趣味のバイクもいつも手の届く場所で、いつもとはまた違った感じで眺めていたかったんです。
ー クライアント
結果、それはとてもうまくゆき、家族のみならず、私たち設計者も含め今でも頻繁に食事会などに寄せていただき、掛け替えのないリラックスした時間を持てるようになってくれています。
ー 前田
前田先生が現場に来られた後の宴会がもう最高だったです。
本当に良く呑みました。
途中からは、家の完成より先生と呑むことの方に夢中だったように覚えています(笑)。
家をつくっている最中から、いつの間にかアトリエも私の家族も一緒みたいになっていたように覚えてます。
それは、家が完成して十年くらいたつ今でも何も変わっていなくて同じです。
スタッフの人たちもよく一緒に呑んだり、時には旅行に一緒に行ったり。
本当に人生が一変したように感じています。
あんなに幸せな時間はもう二度と無いだろうと思います。
私の人生であの期間ほど腑抜けでだらしない時間を過ごしたのは初めてでした(笑)。
とにかく毎日がMAXでした。
ー クライアント
前田アトリエはそれを完璧にこなしてくれました。
私にMALIBUが出来上がるずっと前から最高の時をくれたのです。
だからね いろんな意味で、深い生身の建築人に依頼しなきゃダメなんだと思っています。
自分の夢を機械みたいな人には託せないのではないでしょうか?
私に幸せをくれた前田先生には言葉では言い表せない感謝があります。
きっとこれは私が死ぬまで永遠に続いていくことなんだと思います。
選択肢はたくさんあります。
決めるのも自分たちです。
だから間違えないで一生一度の高額な買い物をしてください。
それで幸せにね、っていうことですかね。
未来の施主のみなさんへ、アドバイスになったでしょうか???
ー クライアント
引渡しの日の気持ちというのは、建築家にとって本当に複雑なものです。
我慢しても我慢しても、目頭が自然と熱くなってきてしまいます。
寂しいものです。
現場で頑張ってくれた職人さん、工務店の方々の努力、そしてうちのスタッフの血の滲むような格闘の数々、そしてそれをしっかりと見守ってくれたクライアントの度量、そういう人達すべての顔です。
利害が完全に合致する由もない工務店と設計事務所では、毎日が戦争です。
本当にヤバイ時が何度もあります。
でも引渡しの日、あるのはただただ、「一緒にこれを造った」という気持ちだけです。
ラグビーで言えば、NO SIDE(敵味方ない)です。
1年半に渡り、このクライアントとずっと濃密な時間の付き合いをしてきて、その過程で、僕が人として一生尊敬してやまない人であろうことを確信しています。
建築って何だろう?って思います。
始めた最初は「思想」だったり「デザイン」だったりします。
学生の時にはそれが一大事です。
でも、そういう「頭の中での操作」の次に来るものは、「人が人を信ずることができる」ということ以外にはありません。
多くの人達の利害を体を張って最前線で調整し、引渡の時に結果オーライにするのが、本当の建築家の役割なのかもしれません。
いつも僕が口にするように、本当に「建築というのは人生のよい精進の道具」だなあ、と改めて気付かされる瞬間です。
ー 前田
※音が流れますので、音量にご注意ください。
家を設計するとは「形をデザインする」のではなく「空気を計画」することだと思います。
それは、魚が濁った水では生きられないように、人も濁った空気ではうまく生きられないのと同じことだと考えるからです。
もしも、あなたが、こうした家の建て方にご興味を持たれたならぜひご連絡ください。
そしてアトリエに遊びに来てください。
歓迎します。