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卒塾生インタビュー


菅野 正太郎

設計演習コース 第4期・第5期 卒塾

菅野 正太郎

  • 在塾期間:2010.4 - 2011.6
  • 入塾時:早稲田大学 建築学科2年
  • 現 在:早稲田大学大学院(2013年末時点)

『大学では1ミリも聞いたことのない教えがあった』


 --- 菅野さんが建築塾に入ったきっかけは何でしたか?
 菅野 大学2年生の春、それまでのトレースが主だった授業が一変して設計課題が始まったんですが、授業で出される課題は年に3つか4つほど・・・それっぽっちの場数では建築を極めることは到底できないだろうと、どこかで感じていました。そんなときにmixiで前田紀貞建築塾のトピックを見つけ、塾生が切磋琢磨している様子が目に飛び込んでてきたんです。
 --- 具体的に、その中のどんなところに惹かれたんでしょうか?
 菅野 そこには「建築とは生き様である」という言葉をはじめ、大学では1ミリも聞いた事のない教えがあったんです。「建築」は大学の授業だけで学ぶものだと思っていましたが、それだけでは刺激が物足りない、もっと経験したことのない刺激にぶつかりたい、もっと自分の殻を破れるぐらい迫力のあるものを作れるようになりたい・・そういった思いがつのって、建築塾に通うことを決心しました。
 --- 建築塾と大学や他の専門学校などとの違いはどんなところだと思いますか?
 菅野 「前田アトリエ」という設計事務所が、そのままこの「建築塾」でもあり、バー(TENZO)でもあるということじゃないでしょうか。最初のころは「塾は理解できるけど、バーを開くのはなんでだろう?しかもそれがアトリエや塾と一体となっているというのはどういうことだ?」と思っていました。でも次第に、それがさっき言った「建築とは生き様である」ということと繋がってくるのだと分かりはじめてきたとき、ここなら大学では一切味わうことのできない経験が得られる!と思いました。
 --- 確かに、塾とバーの空間はほとんど重なっていますし、周りをみればバイクがずらっと並んでたり、サーフボードが立てかけてあったり・・・教育機関としてあるまじき猥雑さ、ですよね(笑)。
 菅野 ただ言葉で教えられるのではなく、具体的にそういう場所で学べたからこそ「無垢に自分の作品を作り続けること」「宴で礼節を以てもてなされること」「媚びずに人と語らうこと」「そうした経験から己を磨いていく事」・・・これらが全て繋がっていると、今では無理なく理解できるようになったのだと思います。小さなスペースですが、授業のための授業、課題のための課題という小さい枠からは決して見えない、大きな世界の広がり方がある場だと思います。
 --- 建築塾で一番苦労したことは何ですか?また、それをどうやって乗り越えましたか?
 菅野 夜の「宴(うたげ)」は全然気が抜けなかったということです(笑)。最初の頃は「塾(日中)の課題は課題、夜の宴は宴」だと高をくくっていたので、エスキス・講義が終わるとホッとしていたのですが・・・宴がいざ始まってみると、物事の順序、場のわきまえ方、ものの言い方・伝え方、作法・礼節・・・とにかく毎回何かを叩き込まれた記憶がありますね(笑)。
 --- 授業の後の「宴」は前田建築塾の核心、と言う卒業生も多いですよね。
 菅野 面白いのは、「課題のエスキス→講義→宴」というセットを毎週積み重ねていくうちに、授業と宴の境界がなくなっていく実感が沸いてきたことです。宴での先生や先輩達との会話で学んだように「媚びずに、順序を考えて」作品をつくっていくこと。逆に、エスキス・講義で学んだように「筋を曲げずに、無垢な心で」宴でのもてなしを受けること。そんなふうに宴で得た事、エスキス・講義で得た事を入れ替えながら、積み重ねていくことで宴もエスキスも楽しくなってきました。
 --- 二期連続で設計演習コースを受講した菅野さんならではの感覚ですね。
 菅野 そうですね。おっしゃるとおり僕は4期〜5期と連続で設計演習コースに通っていたのですが、5期の頃にはとにかく毎週楽しかったです。4期の頃に宴やエスキスで強張っていた自分が嘘のように、自然な態度でどちらも臨めるようになっていました。
 --- 建築塾で一番印象に残っていることはなんですか?
 菅野 5期の宴で、あるとき誰かに「なぜ塾を続けるの(=同じコースを再度受講するの)?」と聞かれたんですが、そのときに自然と「自分の後の人」のことを考えるようになっていた自分に気付きました。そして「もし自分の大学の後輩が入塾することがあれば、その人が気分よく塾に通えるように」と答えたんです。その時は、そんな言葉が自分の口から出たことに自分でも驚きました。でも、知らず知らずのうちに「自分が何かを得る」だけではなくて「何かを残していく」ことの重要性を学んでいたんだと思います。建築は何かを作ると同時に、残すこと。それを塾に通う自分と自然に重ねて考えられるようになっていた、というか・・・入る以前はテクニックや目先のことだけで建築を考えていた自分が、いつの間にか別ものになっていたことにハッとさせられたあの瞬間を、今でもはっきり覚えています。
 --- 建築塾で得た一番大きなものは何ですか?それは今の仕事や生活にどう活きていると思いますか?建築塾に入らなかったら今はどう違っていたでしょうか?
 菅野 とにかく「やり続ける」こと、そしてそれによって飾らない自分に近づき続けることです。塾に入る以前は、自分の曇った見方のせいで物事が複雑に見えていました。だけど、4期、5期と続けていくことで、その曇った自分と何度も向き合え、そしてその都度先生や塾の仲間と語らううちに、物事をシンプルに見たり感じたりすることのできる、新しい自分を再発見し続けることができたように思います。
もし建築塾に入っていなかったら、もしくは途中でやめていたら、「生きようとすること」と「建築」なんて到底関係があるとは思えなかったし、小手先のテクニックにとらわれて続けた「泥まみれ」の自分のままだったと思います。
 --- 菅野さんにとって、前田塾長はどんな人ですか?
 菅野 先生は、とてもシンプルな方だと思います。愚直、と言う怒られてしまうかもしれませんが(笑)、いい意味で極端なくらい真っ直ぐな人というか。「筋を通して生きる」という様がありありと伝わっていきます。僕は特に、それを言葉だけで押し付けようとせず、態度・姿勢によって悟らせてくれるところが好きです。
 --- 最後に、過去の自分と同じような立場や思いをもつ後輩や、入塾を検討している方に一言お願いします。
 菅野 他の卒塾生も口を揃えて言っていることだと思いますが、考えるより先にまず動くことです!入ってから騙されたと思ってみてください(笑)。そんな風には絶対思えませんから。そして、入ったらとにかく続けていくこと。ひたすら「続ける」ことで、己のオリジナルの生き方を手に入れてください。
 --- ありがとうございました。
 菅野 ありがとうございました!

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