放送したお宅
2009年1月4日(日)放送
東京都町田市・山岡邸
−使ったボルト2万個! 宙に浮く鉄箱の家−

2008年4月完成

敷地面積 139平米 (42坪)
建築面積 55平米 (17坪)
延床面積 103平米 (31坪)
RC造+S造
建築費:非公開 坪単価:非公開



外観は、金属の箱が丘の上に置かれたよう。正方形のガルバリウム鋼板をパッチワークのようにボルト留めした壁が印象的です。使ったボルトは約2万個。

傾斜地のため玄関は2階。中に入って正面にも、外壁と同じ仕上げの壁が見られます。最も北側にある部屋は客間。主に奥さんが読書に利用されているそうです。

2階、2部屋目は寝室。東面の嵌め殺しのガラス窓からは高台ならではの眺望が楽しめます。広さ約15畳、L字形、白色で統一されたお洒落な部屋です。

2階の階段横は、床が透明ガラスになった屋内テラス。1階の床まで約4mの高さです。照明スイッチは、シンセサイザーのコントロールパネルを流用したオリジナル品。

LDKは1階。天井は外壁と同じ仕上げ。細い丸柱で支えられた金属箱の下=ピロティをガラスで囲って部屋にしてしまったようにも見えます。

オープンなキッチンは、ご夫婦一緒に料理をするのに最適。真っ赤なダイニングテーブルが、モノトーンの室内にアクセントを加えています。

LDKに隣接する音楽室。音響的には不利ですが、敢えてリビングとの間仕切りを透明ガラスとし、音楽と日常が一体となった生活を演出しています。

水回りは1階奥、キッチンの隣。浴室は広いバスコート付き。プライバシーを守りつつ、見事に空だけを切り取ります。

建築家のプロフィール
前田 紀貞
1960・05   東京都生まれ
1985・03   京都大学工学部建築学科卒
1985・04〜1990・07   大成建設設計本部
1990・07   前田紀貞アトリエ 一級建築士事務所 主宰
現在   日本大学理工学部非常勤講師
    法政大学工学部非常勤講師

 
前田紀貞アトリエ
連絡先   東京都狛江市和泉本町1-9-5グラスハウス1F
TEL   03-6339-5435
FAX   03-5438-8363
E-mail   norisada@sepia.ocn.ne.jp
URL   http://www5a.biglobe.ne.jp/~norisada/
 
建築家の一言

クライアントはギタリストであり、自宅に「音楽スタジオ」の併設を希望した。
ただし、このスタジオは「孤立する部屋」でなく、彼等の「日常生活」や外部の「自然」といつも親密であることが臨まれた。

今回は【崖地-敷地が道路から3M下がった場所にある】という特殊な条件を「デフォルメ」させる事が提案の要となった。

=プロセス1:「金属塊」
【道路面-3m】の場所の上にガルバリウム鋼板の「金属塊」を空に向かって浮かべる。

=プロセス2:【中】と【下】
「金属塊」の【中】をプライベートなスペース、「金属塊」の【下】をパブリックなスペースとして位置づける。また、「金属塊」の【中】と【下】は、環境・自然に対して、「閉じる」と「開く」の関係にもなる。

=プロセス3:マシンヘッド
「金属塊」のフォルムはギタリストの施主に因み、【ギター】のマシンヘッド(先端部の調弦用ペグ)から引用する。

=プロセス4:スリット
「金属塊」に、2本の切り込まれたスリットを用意する。
スリットは空からの光を室内に送り届けると共に、上階と下階との事件(=コミュニケーション)を発生させる。
また、スリットは、「金属塊」を迷路状に分割することにもなり、これによって各諸室は、周辺環境の風景へピクチャーウインドウとして開いてゆく。

=プロセス5:構造
MACHINE HEADの構造解析は、水平力をRC造に、垂直力をS造に持たせて成立している。故に、「金属塊」を支持する(垂直力だけ受け持てばよい)100φのロッド柱は、極限まで「金属塊」の浮遊感を表現し得る

 
渡辺篤史の感想
自動車など工業デザインは、この20〜30年の間に随分と変化して来ました。建築も同じです。数多、デザインもやり尽くされてしまった感があります。しかし、この家には、そんな殻を破って新しい物を作り出そうとするクリエイターの気概に溢れています。嬉しいですね。
こうした斬新な建物は、何より建主の理解があってこそ実現します。設計家も、そんな建主に励まされて、気持ち良くデザインをされた。まさに施主と設計家のコラボレーション。そんな印象です。